深呼吸する言葉・浜辺の歌

波打ち際が歌ってる 寄せては返し歌ってる むこうむこうずっとむこうの浜辺で誰か 海に向かって呟いた そのひとことふたことを 手渡しざぶん 耳打ちざぶん 今、こちらの波打ち際で 私のサンダルぬらしていった

深呼吸する言葉・包む

おくりものを包むように きもちを包み渡すもの それが言の葉ひらひらいちまい

深呼吸する言葉・やさしさって

やさしさって何でしょう。 笑顔でしょうか 言葉でしょうか 態度でしょうか それとも そこに佇む 気配でしょうか

深呼吸する言葉 嗚呼

海に何が流れ込もうと それでも海が美しいように この地に何が降っていようと やっぱり土に触れていたい なぜならそこはわたしの一部 地球に起きていることは わたしの身の上のことと同義 寸分狂わずそのまんま 嗚呼

深呼吸する言葉 紡ぐ

今日という日を 紡ぎだしてくれたのは 今日までのわたし 今日という日と 出会わせてくれたのは 今日までの出逢い

深呼吸する言葉 つなわたり

綱渡りというには心細い 華奢なひもをたぐりよせ 歩いているような、 そんな心持ちになるときもある。でも、その繊細なひもで きっと結晶のような紋様の軌跡を、 編んでいく。 編んでいける。

深呼吸する言葉・プロセス

母をよぶその呼び名を獲得することと、 この世界を信頼することは、 幼子にとってきっと、 無関係なプロセスではないのだろう。

深呼吸する言葉 こころから思う

この世のなかから、 暴力がなくなればいいいと、 また、この社会から 結果主義がうすれていけばいいと、心から思う。その心にも、暴力がある。結果を求めてる。 外へ願うその前に、内へ祈る。

深呼吸する言葉・30分

大人の足で徒歩15分。 それを夏には一時間かけて歩いた。そしてこの冬30分。 なくなった30分の代わりに息子が獲得しているものははかりしれないのだろうけれど、母にはその30分が懐かしくて愛おしい。

深呼吸する言葉・発酵

気配に音が満ちているのではなく、気配が音楽そのものなんだ。 わたしのなかの最小単位がうごめいてぷちぷちはじける体験をした。

深呼吸する言葉・何年ぶりの

何年ぶりの深呼吸。子を産み母になりました。

深呼吸する言葉・大切だから

無言の詩に、星、ひとつ。

深呼吸する言葉・足の裏が伝えていること

わたしの大地はわたしの今。 わたしの今こそわたしの大地。

深呼吸する言葉・ショートヘア

髪は命じゃないけれど、 風受けて季節感じるひとつの感覚器官だと ばっさり切ったらよく分かる。 涼しくなった首筋に恥ずかしがりの春が そっとキスして吹いてった。

深呼吸する言葉・キャベイベ

子ども時代というものは常に過去じゃなく、 内包し、共に育っていけるもの。

呼吸する言葉・2月の光

「人はどうして」的な詩は、 本当は誰かに問いたい「あなたはどうして」なのだ。詩が問いよりも優れているというわけじゃないが、 問いを諦め、すりかえた詩は、何の光も導けない。

深呼吸する言葉・立春!

地上にどんな風が吹いていようと、 地中では芽吹こうという命がまさに今にもウズウズしている。 己の中に確かなそれを今こそ感ぜよ、何よりも!

深呼吸する言葉・かぜっぴき

ぬか床をかきまわすのも、 ときどき風邪をひくことも、 おんなじくらいたいせつかもなぁ。

深呼吸する言葉・傘越しに

寒の内こそ雨暖かく、 傘越しに花開いた梅を見つけた。

深呼吸する言葉・深呼吸を思い出す

「じぶんのできる範囲でするということこそが、 君が君に課している“ちょっとの努力”をすることなんだよ」爪先立ちしてた踵、地面に降りる。そうだ、自分の場所を踏みしめなくっちゃね。

深呼吸する言葉・守りたい

わたしの祈りがほんとうに形になって 守りたいものを守れたらいいのに。 必要なら毛布になって。 必要なら屋根になって。 必要なら光になって。

深呼吸する言葉・ひとりごはん

心許ないわたしだけれど、自分ひとりの夕飯に紫蘇の葉ちらした納豆に、あじ、餃子スープとポテトサラダを用意していた。チョット自分を信じられる気がした。

深呼吸する言葉・おばちゃん

君がふと思い出し笑いしちゃうような、 わたしはそんなおばちゃんでいたい。

深呼吸する言葉・餅

夏にトウモロコシを焼いた網で、 この冬あなたは餅を焼いてくれました。 結婚して丸3年。砂糖醤油を絡め焦がしてイタダキマス。

深呼吸する言葉・大寒の実感

ゴミ収集の音に飛び起き、寝間着のまんま外に飛び出す。 意外に寒くなかったよ。 2009年大寒の朝。関東ほんの一点の、けれども確かな裸の実感。

深呼吸する言葉・雲の化身

朝一番の白い吐息を 雲の化身に見立てて泳がす。 今日という大海原で おはよう、じぶん。

深呼吸する言葉・かくれんぼ

ちょうど良い分の陰が、かくれんぼうには必要で、 ちょうど良い分の寒さが、春をじょうずに隠してる。

深呼吸する言葉・想う人に育てられる

便りがないのはいい便り。 そういう言葉もあるわけで、と冬空見上げて力む丹田。 想う人の幸、祈り祈って、わたしの命が強くなる。

深呼吸する言葉・水泉動

冷たい空気を自転車で切れば、肌はピリリと凍るよう。 見上げた綺麗な青空に、氷を弾いてにやけ顔。 小寒 次候の水泉動は、地中じゃ凍った泉が動き始める頃を表す。 寒中お見舞い申し上げます。

深呼吸する言葉・お正月の引力

お正月の引力も徐々に弱まり青空に雲が少し多くなった。 二〇〇九年雨の日も笑みを浮かべていられるか。 この腹をどんな気持ちで満たすのか。 昨晩の七草粥から立ち昇る幸福な湯気を思い出し、 己の帯を締め直す朝。